@numa08 猫耳帽子の女の子

明日目が覚めたら俺達の業界が夢のような世界になっているとイイナ。

自己紹介

Shenzhen High Tour 18–21/Mar application started 次回のニコ技深圳観察会(2018年3月)募集開始しました。

自己紹介

@numa08 「ぬまぜろはち」と読みます。本名は別に非公開じゃないけど、会社や家でもこの名前で通しているのでこっちで。「合同会社コベリン」という会社に勤めていて、 AndroidiOS や Unity などのアプリケーションの開発やサーバーサイドのアプリやバックエンドのサービス、ツール群の開発を行っています。最も強みのある分野はやはりモバイルアプリの開発ですが、それ以上に会社やチーム全体の業務フローの改善やシステム化を進めることも得意で色んなツールを試したり作ったりして新しいことを挑戦しています。

何やってお金を稼いでるか

会社の業務がメインで、その実態は受託開発が殆どを占めています。ただ、最近はご縁があって書籍を執筆する機会がありました。

好きで作ったもの、好きでやってること

昨年から執筆していた書籍。

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Android アプリ開発者を自称しているので、 DroidKaigi という日本で一番大きい Android カンファレンスの公式アプリへのコントリビュート。

github.com

直近の活動としてはこんな感じです。

 ハードウェアのシリコンバレー深圳に学ぶ およびメイカーズのエコシステム感想

最近読みました。

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「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ を読んだ

今年の年始に旅行で深センへ行ってきた。と言ってもどちらかと言えば香港がメインで深センには日帰りで行っただけ。香港都の違いに戸惑いつつも、色々と楽しむことができた。

深センと言えば駅前から広がる電気街のイメージがった。秋葉原のラジオデパートとか駅のガード下のお店の雰囲気のビルが何個も何個もあって、今は無き秋葉原の面影を見たように思う。ラジオデパートもまだ健在だけど。深センのすごいことはそれ以上に街の中に工場があって、この街1つで物作りが完結することだ。本書は、著者の経験から、深センがどういう風に発展してきて、どうして今のようになってきたのかを著者の目線で語る。

中国で製造される電化製品と言えば、安かろう悪かろうのイメージがあった。実際、2000年頃にiPodがリリースされた前後、様々な種類のmp3プレイヤーがリリースされ、1個数千円で売買されていた。その性能はSonyWalkmanに遠く及ばなかったし電池稼働だし、管理ソフトウェアも充実していなかった。しかし、それでも中学生や高校生だった自分には十分なアイテムだった。こういった商品が安く大量に日本に入ってきた背景には深センの当時のエコシステムがある。公開された基盤を利用し、横流しされたソフトウェアやノウハウを活用し、売れたメーカーと同じような商品を大量に生産していた、いわゆるパクリのマーケットだ。

当時の日本が、あるいは自分が中国をどう見ていたかと言えばどこか見下していたように思う。日本やアメリカのパクリ商品を作っているだけの国、真似しかできないオリジナリティの無い国、どこかおかしいもので溢れかえっている国。その頃、インターネットの文化にどっぷり浸かった事がある人なら共感をしてもらえると思うけれど、中国の音楽や製品を(日本のパクリだ)と言って面白おかしく紹介していた。

さて、そこから10年経った今、どうなっただろうか。確かに未だに類似商品は大量に出ている。その一方で世界を代表するドローンメーカーのDJIが登場し、あるいはスマートフォンメーカーの多くは深センを拠点にしている。

この10年で確立されたものがプロセスのイノベーションなのだろう。パクリ商品といえど商品は商品。しかもパクリ商品が戦う相手はやはりパクリ商品である。そのためいかに「早く市場に出して」「安く提供する」のかが必要だ(そして、おそらく速く撤退することも)。こうして生み出されたプロセスのイノベーション。製造工程を徹底的に効率化することで今につながる物作りのスピード感が生み出されたという。

日本にこういうものはない。プロセスを常に効率化しているイメージが有ると言えばTOYOTAだけれどそれもイメージだけなように思う。凝り固まった「昔ながら」の方法を振り返ることはなく、そのときに適した方法を選択しない。それが美徳とされているようにも思う。

今、日本は未だに中国を見下しているように思う。本書でも触れられているが、新規で製造を行う場合にかかるコストは深センで行うほうが圧倒的に安い。しかし、その背景には確かに人件費のやすさもあるのだけれどそれに加えて徹底的に効率化されたプロセスもまたあると思う。日本で製造を行ったときにコストが上がってしまうのは、単純に品質が高いからではない。

自分は製造業に従事をしているわけではないけれど、プロセスの効率化という非常に大切なことが10年の積み重ねの中で大きな違いを生み出すことに気付かされる本だった。

イルミナエ・ファイル 読んだ

イルミナエ・ファイル

イルミナエ・ファイル

暴走人工知能×スペースオペラ

ケイディが恋人エズラと別れた日、宇宙船団により彼らが住む辺境の惑星は侵攻を受けた。星際企業戦争に巻きこまれたのだ。 人々は3隻の宇宙船で脱出をはかるが、最寄りのジャンプステーションまでは半年以上航行する必要がある。いずれ追手の敵戦艦に追いつかれてしまうだろう。さらに、船内に危険なウイルスが蔓延していると判明する。そのうえ、船の人工知能が乗員に危害を加えようとしていた…… メール、チャットや軍の報告書、復元された文書ファイルでつづられた異色SF

新しい読書体験への出会い

ストーリーや設定の面白さはあとで書くけれど、やはりまずはその目を引く装丁から。

「復元された文章ファイル」の形式で綴られているため、様々なフォーマットの文章が登場する。本文中に登場するメインの3隻の宇宙船の中で取り交わされるチャットやメールでも、おそらく利用しているソフトウェアが異なることから送信者と受信者の位置が微妙に異なったりと芸が細かい。その他、艦内に配布されたという設定の告知ポスターやメール、広報など様々な文章が登場し、読む者を飽きさせない。

さて、こういった「過去に起きた事件」を読者が追体験する方法としては、日記形式による文章がある。H・P・ラヴクラフトやコズミック・ホラー体系の作品の中でよく見たように思う。ただし、日記形式の作品はあくまでも日記の書き手の主観的な事件の進行の追体験となる。書き手が知らないことを読者は知らないし、それを利用したトリックや事件を楽しむことができる。しかし、本書は様々な第3者の視点を含めて発生した事件を追うことになる。今、船の中で何が発生しているのか、知らないものもいれば、正しく情報を知った上で隠蔽するものもいる。星を追われた彼らの心境を推し量りつつ読み進めていくことになる。

復元されたファイルであることから、読者が追いかけるこの事件は何らかの結末を迎えたことが明らかな事実として読者の前に現れる。普通、読書には終わりが訪れる。本が完結しストーリーが完了すれば終りを迎えるし、ページをめくるごとに結末に近づく。しかし、この本は完結をした事件を読者は追いかけることになる。そのため、ほんの結末の到来と事件の全貌を知るタイミングが訪れることを普通の本を読む以上に意識して読むこととなった。いつもとは違う新しい読書体験をすることができたように思う。

盛々のSF的設定

ハードSFと言うには作中に登場するギミックの理論的説明は行われていないし、描画されていないと思う(設定がどうなっているのかはわからないけど)。どちらかと言うと世界観設定が面白い。

  • おそらく未来(はるか昔、遠い銀河の彼方でも問題はないかもしれないが
  • 星の開拓を行う企業が非常に力をつけ、星の統治を行ったり軍隊を組織する世界
  • しかし、それでも(たぶん)地球を中心とする統治する仕組みがある世界観
  • ちなみに、宗教を捨てたりはしていない

こういった世界の中でティーン・エイジャーは恋をして振った振られたといった話をしている。この上で、発生する大きな事件はあらすじにあるように「ライバル企業軍による惑星への攻撃」やその中で利用された「生体兵器をトリガーとするウィルスの蔓延」、そして攻撃のときにダメージを受けた「AIによる反乱」だ。命からがら星を脱出した3隻の船の中で人々は追跡を続ける敵の戦艦と、暴走するAIと正体不明のウィルスの恐怖に怯えていくのだ。

月々と発生する事件、矢継ぎ早に起こる状況の展開にずっとハラハラしっぱなし。時間のあるときに一気に読むのも面白いと思う。

結構分厚い

定価で4,000円を超えるボリュームになっている。多分、これ普通の小説の装丁で書くと文庫本くらいの大きさになるんだろうけれど、ファイルの体裁を取っていることから良くも悪くもストーリーに対して遠回りをしていると言える。普通の小説では描画されないような領域の部分(例えば、戦闘で死んでしまった数千人に及ぶ!被害者のリスト)と言った情報が盛り込まれているのだ。そして、それゆえに読者はただの読者から、いつかどこかで発生した事件を追いかける調査員のような気持ちとなり本の世界へと入っていく。

今までとは一味違った読書体験を経験してみたいのなら本書はオススメ。

Androidを支える技術を読んだ

年明け早々、香港に旅行で行ってきた。行きと帰りの飛行機はLCCを使ったけど、日本からだと4時間くらいかかるので暇な移動時間を潰すために1年位積読してしまっていた本を読んだ次第。

Androidを支える技術〈I〉──60fpsを達成するモダンなGUIシステム (WEB+DB PRESS plus)

Androidを支える技術〈I〉──60fpsを達成するモダンなGUIシステム (WEB+DB PRESS plus)

WEB+DB PRESS の「○○を支える技術」のシリーズはやっぱりハズレがない。この本はAndroidアプリの作り方の本でもなければ、LinuxとしてのAndroidの解説本でもない。前者の本は本屋さんに行けば沢山発売されているし、後者であれば「Androidのなかみ Inside Android」といった本がある。しかし、この本はそのどちらでもない。OSとしてのAndroidがアプリケーションを実行する際、世界のあらゆる開発者が構築したアプリをエンドユーザー目線で動かすため、どのような技術が利用されているのかをLinuxAndroidの世界の境界線のレイヤーの低いところから丁寧に解説をしてくれる本だった。

丁寧すぎるほど丁寧だったので、若干内容は難しいなという印象。自分も、1度読んだだけでは全部を理解しきれたとは思えない。

また、アプリケーションの実装をする人が本書に書かれている内容を全て把握する必要があるのかと言えば、必ずしもその限りではないとも思った。

しかし、大体の技術スタックがそうであるように自分のレベルをステップアップさせたり、他の人が解消不可能なバグに遭遇したときに、その仕組を知っておくことは非常に役立つ。

そういう意味で、全てのAndroid開発者が読んでおくべき内容の本だと思った。ただ、書籍という媒体であるため世界のアップデートへの追従はできていない。できてはいないが、たぶん本書で書かれている部分の大部分は基本的なことなので、大きく変わることもないかもしれない。

どこかのレビューで読んだけれど、ViewGroupのメソッドとして用意されているonMeasureonLayoutの違い、いつ呼ばれるのか2つのレイアウトパスの役割は何なのか、これらのメソッドをどのように実装するべきなのかをしっかり理解していなければこの本を読むべきだ。また、開発者がよく利用する(あるいは、高度に抽象化をして利用している)Handlerによるスレッド間通信がどのようにAndroidの内部で利用されているのかについても解説されている。

Handlerを起因とするバグはスタックトレースを追いかけていってもOSからの呼び出しになってしまうため、Handlerを利用したスレッドの情報を探し出すことがなぜこんなに大変なのか分かる。Handlerを利用する人は何に気をつけるべきなのか、あるいは他の開発者のためにどういった情報を残しておけば良いのかがわかれば、より親切な開発者になることができるかもしれない。

アプリケーションのエンジニアのレイヤーでできることは少ないのかもしれないけれど、光速なアプリケーション開発のためにしっかりと本書を読み込んで不用意に処理に時間がかかってしまう箇所を作り込まないようにしたいと思った。

ゲーム・ウォーズ 今の時代のジュブナイル

 

ゲームウォーズ(上) (SB文庫)

ゲームウォーズ(上) (SB文庫)

 
ゲームウォーズ(下) (SB文庫)

ゲームウォーズ(下) (SB文庫)

 

 映画公開が楽しみな「レディプレイヤーワン」の原作のゲーム・ウォーズを読んだ。

 

面白すぎて下巻は一晩で読んでしまった。

 

世界一の億万長者で世界のインフラを担うOasisの開発者が隠した遺産、イースターエッグを探すために、彼が愛した1980年代のゲームや音楽、アニメや映画を彼と同様に愛し読み込んだ少年の冒険物語。

 

登場する作品はリアルなものばかり。スターウォーズスタートレックは当然、スピルバーグの映画や青春映画。日本のアニメや特撮もカバーされている。残念ながら世代が違うので全ての作品に対して私自身も知識があるわけでは無いのだけど、知ってる作品が出てくるとワクワクする。

 

VR空間の中にはアニメやゲームのキャラクター、それもビデオゲームだけでなくTRPGや小説の中の世界も再現されている。想像できる限り最高の遊園地だ。あー、Oasisの世界に行きたい...

 

SF的ギミックはVRゴーグルや関連テクノロジー、仮想空間でのアクションをフィードバックするハプティック装置、仮想空間中のYoutuber的な存在、現実の通貨よりも価値のある電子マネーetc...

 

楽しいギミックや展開が次々と登場してカオスになりつつもかなり楽しい。カオスで楽しい。

 

映画の公開が楽しみ。

 

「ゼロ・トゥ・ワン」の7つの質問について考えてみる。

「ゼロ・トゥ・ワン」を読んだ。

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この感想は空港から移動するバスのなかで10分くらいで書いた。

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

本の中に登場する「7つの質問」は、この本が説明しようとしていることをかなりコンパクトに纏めたものだと思ったので、本を読んだちゃんとした感想や考察という意味で記録を残す。

7つの質問

13章「エネルギー2.0」に登場する。

  1. エンジニアリング - 他社より10倍以上の差があるテクノロジーを持っているか
  2. タイミング - そのビジネスを始めるのに適切な時期か
  3. 独占 - 大きなシェアが取れる小さな市場からのスタートができるか
  4. 人材 - 正しいチーム作りができているか
  5. 販売 - プロダクトを作るだけではなく、それを届ける方法があるか
  6. 永続性 - この先10年、20年と生き残るポジショニングができているか
  7. 隠れた真実 - 他社が気がついていない、独自のチャンスを見つけているか

13章は2010年にアメリカで起こったクリーン・エネルギーバブルの中でなぜ多くの企業が潰れていったのか、なぜ同じくらいのタイミングでビジネスを行ったイーロン・マスクテスラ・モーターズは今でも大きな企業なのかをこの7つの質問に対してどういうアクションを行っていたのか、という観点から著者の見解を述べている。

この7つの質問について本の中ではなぜこの質問を行うことが正しいとされているのか、そして我々がビジネスを行うときにこの質問が本当に役に立つのかを考えてみる。

エンジニアリング

なぜテクノロジーが大切なのか。第1章「僕たちは未来を創ることができるか」では「ほとんどの人はグローバリゼーションが世界の未来を左右すると思っているけれど、実はテクノロジーがはるかに重要だ」としている。この世界の資源は限らているため、新たなテクノロジーがなければグローバリゼーションも起こり得ないし、進歩もない。

また、2章の「1999年のお祭り騒ぎ」ではライバルのものを改良して、既存顧客のいる市場から始めると、収益が消失するとしている。

結局他の企業を大きく引き離し市場を独占するためには他の企業が実現できていないテクノロジーの実現を行う他ない。

タイミング

5章の「終盤を制する」ではファーストムーバー・アドバンテージを狙うよりも最後に市場に参入して大きく成長すればいいとしている。先に市場に入り込むほうが他にだれもいないことから市場を独占しやすくなるファーストムーバーは目的ではなくて手段であることを間違えないようにと言っている。

いつを以って、ベストなタイミングと言うべきなのかは難しいのかもしれないが会社の中で準備が整っていないのにファーストムーバーを無理に取りに行くことは意味のない行為である点は注意したい。

独占

4章の「イデオロギーとしての競争」で「競争すればするほど得られるものは減っていく」と述べている。90年代に発生したオンラインのペットストア市場をめぐる戦いでは勝者はペッツ・ドットコムだが、ネット・バブルの崩壊を受けてペッツ・ドットコムも破綻してしまった。競争の中で企業はライバル企業にのみ注意をしてしまう。オラクルとインフォミックスはほぼ個人攻撃といえる広告を立ててお互いに罵りあった。

競争の中で消費者は不在となり、敗者には破綻が、そして勝者には負債が残る。

それなら、しっかり市場を独占して消費者のためのものを作りたい。

ただし、投資家や政府は独占を好まない。そのため、市場の独占に成功した企業は自分たちが独占をしていることを秘密にしたがる。

人財

第10章「マフィアの力学」の中で「職場にいる間に長続きできる関係が作れないなら、時間の使い方を間違っている。投資に値しない」と述べている。スタートアップに必要なのは職場を超えて良好な関係を築くことができるようなメンバーだ。

必要なメンバーを「共謀者」とも言える。筆者は自分たちの「ペイパル・マフィア」のことを指して「マフィアのようでも良い」と言った。ボスとなるCEOがいてその人の考えやビジョンに共感をした人々でメンバーは構成されているべきなのだ。

これは全くそのとおりだと思った。スタートアップに関して特に意見の不一致による空中分解の危機はすぐそこにある。だから自分たちの会社でも意見を出し尽くすようにして、不一致を抱えたまま日々を過ごさないようにしている。意見の一致や会社のビジョンに対する共感があるので、別の会社の待遇にそこまでそそられないという現状もある。

販売

エンジニアは営業やセールスのことを嫌う傾向にあると思う。有る事無い事を盛って盛って盛りまくって売上を上げても、消費者に対して誠実ではないような印象を持ってしまう。ただ、実際のところおたくでエンジニアでもコマーシャルの影響を受けている点については認める必要があると、第11章「それを作れば、みんなやってくる?」で述べている。

必要なのは作った製品を必要としている人の元に届けるためのチャネルだ。営業やセールスはそのチャネルの発見や構築に欠かせない。

マーケティングに関してはC2Cサービスの展開をしている人々であればかなり興味をもつだろう。ユーザーの行動を分析してその人が求めている所に売り込む。検索エンジンの広告がこれかな。

一方で大口の取引のためのセールスが必要であることも分かる。1つの商品の販売が何億円という売上を上げる場合では、顧客との良い関係を作り上げるために長い年月を掛ける必要があるかもしれない。それよりも規模の小さい数百万円の製品であれば適切な規模の営業チームをつくることが適している。

マーケティングとセールスの間にはデッドゾーンがある。中小規模の消費者向けにはコマーシャルを出すわけにはいかない。さらに営業マンを用意するにしても単価に対して見込み客の全てをカバーすることはできない。

販売について適切な戦略を考える必要はあるがデッドゾーンについて注意をする必要もある。

永続性

独占やタイミングの部分と被るけれど、ラスト・ムーバーになるような戦略を立てるべきなのだろう。他社とは大きく違う技術を持っていたとしても、他社が乗り入れてきたときの戦略をどうするべきなのか。

隠れた真実

隠れた真実を見つけること、それこそがその企業の単一のアイデンティティだ。第8章「隠れた真実」で隠れた真実が何なのかの解説を行っている。それは発見することが難しいものだが、近い所に到達不可能な疑問も存在している。どれだけ考えても解き明かすことのできない真実だ。宗教組織は「神の神秘」と言って到達不可能な謎が信仰の対象になる。

周りから見れば隠れた真実を求める人とカルトの宗教団体は紙一重と言える。

18世紀には世界地図に埋まっていない場所もたくさんあったしテクノロジーは大きく進歩していなかった。現在では隠れた真実なんてないんじゃないか?いつの頃からかそう考えるようになってきたが、書籍の中でなぜ人々がそう考えるようになったのかの解説があった。

確かに、物理的なフロンティアが無くなったのは原因の一つのようだ。それに加えてさらに四つのトレンドが世界を支配している。

  1. 漸進主義。子供の時から少しずつ順を追って学ぶことを教わってきた。そこから外れたことを学んでも評価されないしそれどころかマイナスの評価になる可能性がある
  2. リスク回避。 隠れた真実を見つけようとすることは間違えることだ。間違えを恐れる人は隠れた真実には到達できない
  3. 現状への満足。 社会のエリートとなって過去の遺産で暮らしていける人々は隠れた真実を見つけようとはしない
  4. フラット化。 グローバリゼーションが発達し世界中の人々が同じ市場で競争をするようになった今、世界の何処かで自分よりクリエィティブな人が課題を解決したのではないだろうかと考えてしまう。

このトレンドに支配されて隠れた真実の発見をしないのであればその企業にアイデンティティはない。

まとめ

ちゃんと時間をかけて感想を書くとこんな感じになった。一応、我々の会社もスタートアップだし新しいことをやろうとしているので、ここの質問を思い返してみたい。

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

年末年始、kindleで気になったビジネス書でも読んでみようと思って購入。まったりと読んでいたので1週間くらいで読み終わった。タイトルが「ゼロ・トゥ・ワン」となっているように起業において最も大切なことは「1をそれより大きい数にする」ことではなく「0を1にすること」とするのが本書の主張。

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

起業の目的や手段、この先生き残るためには

書籍の中で何度も出てくるフレーズの1つに「賛成する人のほとんど居ない、大切な真実は何だろうか?」という疑問があった。隠された真実とも言っている。起業を行い会社の価値を高め、この先の未来をつくるために必要なことはこの「隠された真実」に気がついて、課題を見つけ解決し独占することに他ならないと著者は主張をしている。

この先生き残るために必要なこと、それは「独占」だと思う。確かにそうだ。他の人の追随を許さず、参入の余地のないことを行いしかもそれが価値のあることならば、少なくとも自分の代の中で生き残ることは可能だ。ただ、資本主義社会の中では独占は悪とされてもいる。競争こそが釈迦の原理であり、我々を進歩させるのだと。

冷静に考えると競争はあんまりよろしくない。競争の結果生まれるのはライバル企業を潰してやろうとするモチベーションだ。そこの消費者が入り込む余地はない。いかに競争をすることを避け独占状態を作り出すことができるのか、それこそが大切なことなんだ。

どうやって独占状態を狙うか

本書の中では企業がどうやって市場の独占状態を狙うのか、その方法についても論じている。幾つか要点はあって詳しくは本を読むべきなんだろうけれど、例えば狙い目を間違ってはいけないと言ったものがある。

ランチにミャンマー料理店を出店しようと思っている人が居たとして、そのエリアでミャンマー料理店は他にないので独占状態となる!ということはもちろん、無い。ライバルは他のミャンマー料理店ではなくランチを出すお店だ。

スタートアップのビジネスを考えるときにこれはやりがちなミスとなる。ある視点から見れば独占状態だけれど実はそれはもっと大きな目線で見れば独占状態とはいえない。本の中では2010年にアメリカで起こったクリーン・エネルギーバブルを例にこう言った企業が陥りがちなミスを具体例と一緒に説明をしてくれていて分かりやすかった。

また、独占状態を狙うために小さくスタートすることも推奨している。テスラが成功を収めたのはクリーン・エネルギーバブルの中で「クリーン」な自家用車を求めていた富裕層に対して、プリウスや箱のような電気自動車ではなく、クールなデザインのスポーツカーを販売し、独占をしたからだと分析していた。

この本を読んで

今、コベリンでは詳しくは書けないけれど新しいサービスをスタートさせようと調査や準備を行っている。この本から大きく外れたことは行っていないと思うが、この本に出てくる「7つの質問」、つまり

  1. エンジニアリング - 他社より10倍以上の差があるテクノロジーを持っているか
  2. タイミング - そのビジネスを始めるのに適切な時期か
  3. 独占 - 大きなシェアが取れる小さな市場からのスタートができるか
  4. 人災 - 正しいチーム作りができているか (これはできていると思う)
  5. 販売 - プロダクトを作るだけではなく、それを届ける方法があるか
  6. 永続性 - この先10年、20年と生き残るポジショニングができているか
  7. 隠れた真実 - 他社が気がついていない、独自のチャンスを見つけているか

について再度話し合って見る必要性があると思った。