@numa08 猫耳帽子の女の子

明日目が覚めたら俺達の業界が夢のような世界になっているとイイナ。

「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ を読んだ

今年の年始に旅行で深センへ行ってきた。と言ってもどちらかと言えば香港がメインで深センには日帰りで行っただけ。香港都の違いに戸惑いつつも、色々と楽しむことができた。

深センと言えば駅前から広がる電気街のイメージがった。秋葉原のラジオデパートとか駅のガード下のお店の雰囲気のビルが何個も何個もあって、今は無き秋葉原の面影を見たように思う。ラジオデパートもまだ健在だけど。深センのすごいことはそれ以上に街の中に工場があって、この街1つで物作りが完結することだ。本書は、著者の経験から、深センがどういう風に発展してきて、どうして今のようになってきたのかを著者の目線で語る。

中国で製造される電化製品と言えば、安かろう悪かろうのイメージがあった。実際、2000年頃にiPodがリリースされた前後、様々な種類のmp3プレイヤーがリリースされ、1個数千円で売買されていた。その性能はSonyWalkmanに遠く及ばなかったし電池稼働だし、管理ソフトウェアも充実していなかった。しかし、それでも中学生や高校生だった自分には十分なアイテムだった。こういった商品が安く大量に日本に入ってきた背景には深センの当時のエコシステムがある。公開された基盤を利用し、横流しされたソフトウェアやノウハウを活用し、売れたメーカーと同じような商品を大量に生産していた、いわゆるパクリのマーケットだ。

当時の日本が、あるいは自分が中国をどう見ていたかと言えばどこか見下していたように思う。日本やアメリカのパクリ商品を作っているだけの国、真似しかできないオリジナリティの無い国、どこかおかしいもので溢れかえっている国。その頃、インターネットの文化にどっぷり浸かった事がある人なら共感をしてもらえると思うけれど、中国の音楽や製品を(日本のパクリだ)と言って面白おかしく紹介していた。

さて、そこから10年経った今、どうなっただろうか。確かに未だに類似商品は大量に出ている。その一方で世界を代表するドローンメーカーのDJIが登場し、あるいはスマートフォンメーカーの多くは深センを拠点にしている。

この10年で確立されたものがプロセスのイノベーションなのだろう。パクリ商品といえど商品は商品。しかもパクリ商品が戦う相手はやはりパクリ商品である。そのためいかに「早く市場に出して」「安く提供する」のかが必要だ(そして、おそらく速く撤退することも)。こうして生み出されたプロセスのイノベーション。製造工程を徹底的に効率化することで今につながる物作りのスピード感が生み出されたという。

日本にこういうものはない。プロセスを常に効率化しているイメージが有ると言えばTOYOTAだけれどそれもイメージだけなように思う。凝り固まった「昔ながら」の方法を振り返ることはなく、そのときに適した方法を選択しない。それが美徳とされているようにも思う。

今、日本は未だに中国を見下しているように思う。本書でも触れられているが、新規で製造を行う場合にかかるコストは深センで行うほうが圧倒的に安い。しかし、その背景には確かに人件費のやすさもあるのだけれどそれに加えて徹底的に効率化されたプロセスもまたあると思う。日本で製造を行ったときにコストが上がってしまうのは、単純に品質が高いからではない。

自分は製造業に従事をしているわけではないけれど、プロセスの効率化という非常に大切なことが10年の積み重ねの中で大きな違いを生み出すことに気付かされる本だった。