@numa08 猫耳帽子の女の子

明日目が覚めたら俺達の業界が夢のような世界になっているとイイナ。

アルテミスを読んだ

アルテミス(上) (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス(上) (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス 下 (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス 下 (ハヤカワ文庫SF)

近未来の月面を舞台に、密輸業を営む主人公の女性が不可解な依頼を受けたことをきっかけに、微妙な人間関係の人々と手を組んで月都市を巻き込む陰謀に立ち向かうストーリー。

物語の登場人物が多いのだけれど、その一人ひとりがストーリーの終盤に絡んでくる構成にワクワクした。

作者は火星の人と同じ、アンディ・ウィアー氏。火星の人のときもそうだったけれど、困難な状況に面していながらも明るい語り口と科学知識で課題を解決していく軽快なノリが楽しい作品だ。

主人公は溶接の技師でもあって、物語中に何度かこのテクニックが発揮されるシーンが登場する。月面という低重力、ほぼ真空空間中での溶接作業なんて今までの人生の中で全く想像したこともないようなテクニックを発揮する。この中でやはり作者の持つ化学の知識が発揮され、何が危ないのか、何が困難のか丁寧な解説が行われる。それでも、専門書のように小難しい内容になるのではなくテンポよくストーリーが進行していく。 主人公も魅力いっぱいだ。月面都市のアルテミスのアンダーグラウンドというか、そっち系に顔の効く彼女は誰からも愛されるタイプのキャラクターだ。関係が悪化しても殺したいほどの子ではない、いつまでたっても悪ガキのような少女のような。設定年齢よりも少し幼く感じた。あんまりリッチではないけれど、精一杯生きている感じ。そんな彼女だからこそ、街を誰よりも愛していて、それゆえに皆をまとめることができたんだろうな。

知らなかったけれど、この作品も映画化が決定しているらしい。楽しみ。

作者の構想としては、月面都市アルテミスを舞台とした別のストーリーを作っていく思いがあるらしい。次回作にも期待をしたい。