- 作者: ネヴィル・シュート,佐藤龍雄
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/04/28
- メディア: 文庫
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最近は読書感想文ばっかりだなぁ。
Hard Things を読んで次はフィクションかなぁと思い読む本を探していた。そう言えばガイナックスのアニメはサブタイトルにSF小説のタイトルを使っていたなぁと思い「放課後のプレアデス」のwikipediaのページを開いた。
最終話のタイトルは「渚にて」。以前から気になっていた本だったことを思い出した。
第三次世界大戦が勃発し、世界各地で4700個以上の核爆弾が炸裂した。戦争は短期間に終結したが、北半球は濃密な放射能に覆われ、汚染された諸国は次々と死滅していった。かろうじて生き残った合衆国の原潜〈スコーピオン〉は汚染帯を避けてメルボルンに退避してくる。オーストラリアはまだ無事だった。だが放射性物質は徐々に南下し、人類最後の日は刻々と近づいていた。そんななか、一縷の希望がもたらされた。合衆国のシアトルから途切れ途切れのモールス信号が届くのだ。生存者がいるのだろうか? 最後の望みを託され、〈スコーピオン〉は出航する……。読者に感動をもって迫る永遠の名作。
ポストアポカリプス。直接的な難を逃れオーストラリアに住む人々の物語。SF的ギミックと言うよりも仮想の世界の中で人々がどう生きるのか、どう死んでいくのかをそれぞれの人々の目線で描くスタイルが自分の好みと一致した。
スコーピオンの艦長はアメリカ軍人の潜水艦艦長として。彼の部下でオーストラリア海軍の将校は一家を支える父親として。アメリカ軍人を愛した女性も叶うことの無い恋だと知っていてもそれでも一人の男性を愛した女性として。それぞれが最後の時を迎えた。その生き様、死ぬことへの恐れよりも誇りを失うことを恐れる人々の姿に心が震えた。
そう言えば、昔似たようなテーマのゲームが有ったなと思って記憶を掘り起こしてみた。「そして明日の世界より――」だ。
こちらは人類が完全に滅亡するわけではなく一部の人の生存の可能性が残されていた。ただ、主人公たちは生き残ることよりも今を精一杯生きることに価値を見出していずれ訪れるであろう人類の再興の日のために遺産を残す。
どちらの作品も生きることに絶望することなく精一杯生きることが美徳であると表現されていた。一日居日を無駄にすることなく、あるいは無駄にすることすらも価値を持った一日だと振り返ることができるように生きていきたいものだ。