@numa08 猫耳帽子の女の子

明日目が覚めたら俺達の業界が夢のような世界になっているとイイナ。

「俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する」感想

友人の @kaname_aizuki氏がラノベ作家とデビューをされました。おめでたい。デビュー作の「俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する」の献本をいただきましたので、感想を。

高等専門学校高専に通う幸成たち12名の学生たちが目を覚ますと、そこは異世界でした。ロボコペ優勝を目指してガレージで徹夜作業をしていたはずの彼らが、まず行ったのは……物理法則の確認! 摩擦、空気抵抗、重力、電気抵抗と、自分たちの知識を駆使して、その土地を調べ上げるメンバー。ひとまず生命が活動することができることを確認した彼らは、これから始まるサバイバル生活に落胆することしかできず……。しかし、森で廃棄されていた魔道具【マジックアイテム】を拾ったことで、彼らの運命は大きく動き始める――!

高専生という生き物は面倒くさい。万物の現象の理由を探り、仕組みを解析し、正確さを求める生き物。弊社は4人中3人が高専卒ですが、この本を読みながら「うん、うん、わかる。わかるよ」という気持ちになります。と言いつつ、自分も理工系の大学出身なのでまぁ似たようなものかなと思ったりもするのですが。

異世界に飛ばされた彼らのやること、それらはかつて自分たちが大学の頃の活動とそして今の仕事と重なる部分があり、青春を感じさせる1冊でした。

仕組みと言うものに我々はどうやら非常に心を惹かれるようです。見ず知らずの世界に飛ばされたとき、まだ誰も自然法則を解明し理解していないのならば自分たちがやればいいじゃないか、そう思う心理に共感できます。

現象を観察し、その理由を推測し実験を行い考察を経て自分たちの制御下に置く。これが科学であり人類が文明を発達させてきた愚直で、だけれでも堅実な手法です。

しかし、異世界の人々はそうではありませんでした。彼らには「魔法」があります。魔法は科学とは違い現象が発生する理由がありません。あるいは、あるのかもしれないけれど誰も気にしないもの。

異世界からやってきた高先生たちは誰も触れなかった「魔法」の発動の理由に興味を持ってしまいます。魔法物のフィクションとしては若干タブー。個人的にはこの部分がちょっと不安でした。フィクションの中の魔法は魔法として描かれるからこそ華であって、理由の調査をしてしまうのってどうなの・・・?ただの科学公証本になっちゃうのでは?そんなことも思ってましたが、不安は良い意味で裏切られました。ネタバレは避けますが、魔法は魔法のまま、しかしその原因を追求する姿勢も尊重する部分に著者の優しさや、魔法を扱うフィクション作品への尊重を感じました。

物語の後半、主人公たちは強大な敵(物理)に対峙をするためトライアンドエラーをひたむきに続けます。世界の中で誰も作ったことのないアイテムを作るために努力をする。その光景が、かつて自分が大学の講義や研究室で何度も何度も値を調整し結果を確認していたあの頃を思い出しました。

現象を観察し理由を推測し、実験を行い考察をする。そのプロセスが自分が大学生だった頃や今の仕事に向き合う気持ちに重なる部分があり、青春を感じさせる作品でした。