プログラマの映画 Advent Calendar 8日目の記事です。
冒頭の陸上自衛隊レイバーX10暴走シーンの作画は、20年以上が経過した今でも色あせない迫力のあるシーンで好き。
多発するレイバー暴走事件。一見、関連性の無い一つ一つの事件だが、全てのレイバーが最新のOS、"H.O.S."を搭載していた。たった1人の天才プログラマによって開発されたそのシステムは、稼働中のほぼ全てのレイバーに搭載されている。
行政の後押しで導入が推し進められているシステム、"H.O.S."に隠された犯罪に特射2課は果たして打ち勝つことができるのか。今、日本の平和を掛けた誰も知らないヒーローの物語が始まる・・・。
こういう感じだとすごいヒーロー物感があるけれど、本編はそうでもない。わりとオッサンが歩きまわったり、語ってたりする感じの映画だった。後半の戦闘シーンは他の劇場版と比べて長いけど。
千葉繁さんのこと
通称シゲさんは整備課の若手のリーダー。ソフトウェアに関しての知識は整備班長の榊を凌ぐ。実はこの作品、彼の機転で特車2課のレイバーにはH.O.S.が搭載されず、結果的に暴走事件に立ち向かうことのできる唯一のレイバー隊となった。
実際、彼の行動はすごい。上層部から渡された新しいソフトを「なんだかよくわからない物」と突っぱねたわけだ。中々できるもんじゃない、というかお前警察官がそんなことしていいわけねえだろ。
とは言え、やはりエンジニアとしては可能な限り自分が面倒を見るその姿勢は見習いたい。我々はよくREADMEだけ見て(あるいはそれすらも見ずに)新しいライブラリやソフトウェア、フレームワークの導入を先走ることがあるが、そうではいけないのだ。
また、物語中盤で彼の部屋が出てくる。狭い畳敷きの部屋に所狭しと様々な計算機(パソコンと言うよりマイコン)を並べてゴチャゴチャやっているのだが、そのシーンがたまらなく好きだ。やはり、ソフトウェアエンジニアリングに携わる人間として、その生活の中心に計算機を置いておきたい物である。
また、短いが重要なシーンでMITがH.O.S.の解析(リバースエンジニアリング?)を行った結果、暴走を引き起こすコードがあったことが判明する。そこも、彼が映画序盤でアメリカに行っていたのが功を成したと言えるのだが、国際的な活躍のできる人間と言うものは、憧れる物だ。
帆場暎一のこと
本作の悪役、しかし冒頭のシーンで飛び降りをする男。狂気の天才、孤高のエンジニア。H.O.S.の開発を一手に担い、リリースするその能力。わりと憧れてしまいますね。
実際問題、たった1人で大規模なシステムの開発をすることは多分今ならありえないだろう。コードの属人性は廃すべきものだし、そうするためにコードレビューや問題共有などの工夫をしてチームをマネジメントする。
フィクションだから憧れることなのだ。自分1人で作ったソフトウェアが何千、何万の人に利用される世界を想像するとワクワクしてしまう。確かに魔が差したら時限爆弾をしかけてしまうかもしれない。
そんなちょっと歪んだ夢を見てしまう魅力的なキャラクターでした。
H.O.S.のこと
確かに、1人の人間が作ったソフトを誰も詳細は知らないまま利用をすることはそうそうないだろう。しかし、「1人の人間」でなくても「1つの法人」であったり「1つの組織」であったりする物が提供するサービスやソフトウェアに依存をすることは現実世界ではよくある。
もちろん、オープンなサービスならば故意の犯罪が起こらないように利用規約などで利用者とサービスを提供する物の権利が定められているわけだ。従って、恐らく容易には映画のような自体は起こらないだろう(多分
とは言え、そんな危険と実は隣り合わせの世界に我々が生きていること、そしてこの状況は20年以上前から予見されていたことを教えてくれた映画だった。
明日は @mironalが、戦争と平和は隣り合わせで云々とかオッサンが語り合う映画、「機動警察パトレイバー2 the Moivie」の話をするそうですよ。楽しみですね。